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 HACCPシステム
食品安全を確保するための技術的な手法として有名なのが、HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point:訳としては"危害分析及び重要管理点"が一般的)です。1960年代の米国におけるアポロ宇宙計画の際に開発されたこの手法は、最終製品の抜き取り検査による安全性保証という従来の概念ではなく、食品製造工程において明らかにした重要管理点(CCP)を確実に管理・制御することで、最終製品の安全性を確保するという画期的なアプローチでした。国際食糧農業機関(FAO)と世界保健機構(WHO)との間に設置された食品の国際規格を策定するコーデックス委員会は、1993年にこの手法を採用し、HACCP導入のための指針が「食品衛生の一般原則の規範」の附属書として発行されました。その後、HACCPの手法は、食品安全確保のための効果的な方法として各国に普及し、我が国でも1995年に「総合衛生管理製造過程」として、食品衛生法の中にHACCPの手法を用いた承認制度が取り入れられました。
 ISO 9000シリーズ規格と食品業界
一方、工業界を中心として1990年代から急速に普及したのが、製品の品質保証のための規格であるISO 9000シリーズ規格でした。ISO 9000シリーズ規格は、製品の品質保証の仕組みを標準化するという画期的な考え方と、どのような製品・サービスにも適用できる柔軟性、第三者による審査登録制度という信頼性などから、様々な業種・業態に広がりをみせました。そして、1990年代半ばからは、食品関連企業においてもISO 9000シリーズを導入する組織が増え始め、食品業界では、HACCPとISO 9000シリーズという2つの概念が融合していきました。
転機になったのが、2000年にISO 9000シリーズ規格が大幅改訂され、登場したISO 9001:20000規格です。従来の"製品の品質保証"という概念から、"品質マネジメント"という経営の要素を全面に押し出したこの規格は、産業界に支持を受け、食品業界を含め、さらに拡大していきました。
 ISO 22000制定へ
その一方、食品業界は、国内外において1990年代から2000年初頭にかけて食品の安全性や信頼性を脅かす様々な事件・事故が発生します。大規模食中毒やBSE問題、鳥インフルエンザ、産地偽装問題などがその例ですが、食に関する問題はグローバルなテーマとして議論されることになります。
そして、2005年9月に登場したのが、“ISO 22000:2005 食品安全マネジメントシステム”です。HACCPとISOマネジメントシステムの両方の概念を持ち合わせるこの規格は、グローバル化した食の安全性に関する問題への一つのアプローチ方法として期待されています。
 ISO22000の登場で何が変わるか
これまで、厚生労働省が進めてきた総合衛生管理製造過程(日本版 HACCP)では、承認品目が限定 されており、それ以外の食品を取り扱っている組織は、承認を得ることが出来ませんでした。ISO22000は第三者審査を想定した規格となっており、すべての食品関連組織が取り組むことが可能です。
大手企業では、購買先の管理やトレーサビリティの確保を目的として、この規格を購買先に要求することも考えられでしょう。また、すでに ISO9001を取得している企業は、食品安全リスクを強化するためにリスクマネジメントのツールとして、ISO22000を活用することができます。
 ISO22000を導入することで期待できるメリット
食の安全・安心は当然のこととして消費者や取引先から求められる今、まずは安全な製品を提供しなければ消費者や取引先の感じる安心は提供できないといえるでしょう。そのためには、安全な製品を実現するための仕組みの確保が急務といえます。
現場を中心とした従来のHACCPシステムではなく、組織全体で食品安全を追求するシステムであるISO22000を導入することにより、より強固なリスクマネジメントを実践することが可能となり、その結果として顧客に対する安心の提供を実現することができます。
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